魚スケッチ Vol.1 クロダイ 生態や分布、特徴、利用について

魚イラスト

クロダイ(チヌ)について

和名:クロダイ(別名:チヌ)
学名: Acanthopagrus schlegelii

全長:最大70cm
分布:北海道南部から日本列島、台湾や朝鮮半島

生態:水深50m以浅の沿岸域に生息し、汽水域にもよく進入する。また、完全な淡水域にも遡上しており、汚染にも比較的適応能力が高い。春が産卵期で、生後1年で10cm、5年で25cm、10年で40cmほどに成長します。
 若魚は雄であるが、4歳上で雌に大半の個体が性転換する。一部、ホルモンバランスの影響でメスにならない大型個体もいます。

チヌの分類と地方名

本州から九州にかけてはクロダイとキチヌの2種のみが生息していますが、ナンヨウチヌとミナミクロダイ 、イワツキクロダイ の3種は琉球列島に分布しています。

 名称については地方名が多く、釣り人を中心にチヌの愛称で呼ばれるほか、

  • クロ(東北地方)
  • ケイズ(関東地方)
  • カワダイ(北陸地方)
  • チンダイ(山陰地方)
  • チン(九州地方)

 このほか、「クロチヌ」、「ケンダイ」、「シロダイ」、「ズイ」、「タケチヌ」、「チンダイ」、「ツエ」、「ナベワリダイ」、「マキ」、「マナジ」など多様な名称で呼ばれています。


 また、英名はblack seabream(ブラック シーブリーム)です。

 近年の新たなチヌの呼び名であるブリームはここから名付けられたものとみられます。
 seabreamがタイ科の海水魚を総称する意味を持ちます。


 これだけ多くの別名があることから、古くから日本各地で親しまれてきた魚だということがわかります。

チヌ”の由来

 大阪湾を茅渟(チヌ)の海と呼んでいたことが古事記に書かれており、釣り人が呼ぶチヌの名称はこれが由来と言われています。

 ちなみに、出世魚でもあるのですが関西ではババタレ→チヌ→オオスケ、関東ではチンチン→カイズ→クロダイとなります。

 また、釣り人の間では50cmを超える大物を「年無し」(何年生きているかわかならいことから“ねんなし”)とも呼びます。さらに60cmを超えると「ロクマル」とも呼ぶようです。

釣り人の憧れの魚

 チヌの正式名称は黒鯛ですが、ただ黒い鯛ではありません。
 釣り人にはいぶし銀と呼ばれ淡い黒の縞模様が複数入るほか、黒の中には青や緑といった色の深みが見られます。また、釣りの対象魚としても最も人気がある魚の一つであり、釣り方のバリエーションが豊富で地方独特の釣り方も一つの文化として残っています。

 実際釣るのは難しい!

 好奇心旺盛なのに臆病であり、簡単に釣れたかと思うと狙ってもなかなか釣れてくれない。飽きのこない生涯の思い人のようです。

 イラストにはチヌの好物であるイガイ(カラスガイ)を散りばめました。強力な顎で貝を砕いて食べてしまいます。

 すぐ近くの海にいるのに、黒曜石のような黒の奥に潜む煌めきを求めて今日も海に出かけます。

クロダイの利用について

 クロダイは美味しい魚の一つとして知られており、日本やアジア圏で広く食べられています。また、栄養価も高く、健康に良い食材としても注目されています。そこで、クロダイの利用方法についてご紹介いたします。

  1. 刺身
    クロダイは刺身としても美味しく食べられます。新鮮なクロダイを薄くスライスして、ポン酢や醤油、わさびなどでいただきます。クロダイの身はやわらかく、淡白な味わいがありますので、刺身として食べるのがおすすめです。
  2. 焼き物
    クロダイは、焼き物としても美味しく食べることができます。魚焼きグリルなどで焼いて、塩やレモン、醤油などで味付けします。皮目をパリッと焼くと、食感がよくなります。
  3. 煮物
    クロダイは、煮物としても利用できます。鍋料理や煮付けなどにして、大根やにんじん、しいたけなどと一緒に煮込みます。鍋料理の場合は、クロダイの頭やアラを使って、だしを取ることもできます。
  4. 揚げ物
    クロダイは、衣をつけて揚げ物にすることもできます。天ぷらや唐揚げにして、甘酢あんやタルタルソースなどを添えて食べるのがおすすめです。揚げ物はカロリーが高いため、食べ過ぎには注意が必要です。
  5. スープ
    クロダイを使ったスープも美味しくいただけます。クロダイの頭やアラを使って、だしを取ります。鍋料理の場合にも使用した大根やにんじん、しいたけなどを入れて、具材としても活用できます。

 どのような料理にも合う淡白な味わいが特徴的なので、さまざまな料理に使える魚として、幅広く活用できます。